【2024年の先にある2030年問題が重要】小野塚征志氏が解説する2024年以降も勝ち残る運送会社になるためには?Vol.5

Vol.4では荷主の今後やサプライチェーンからサプライウェブへの移り変わりを解説いただきましたが、今回は2024年の先にある問題や勝ち残り方をローランド・ベルガーのパートナーでロジスティクス/サプライチェーン分野に深い知見を持つ小野塚征志氏にお話しいただきます。

2024年の先にある2030年問題が重要

-2030年になると輸送能力が35%弱不足する
私が最近よく話しているのは、2024年問題ではなく2030年問題です。NX総合研究所の試算では、今のまま2030年に至ると輸送能力が35%弱不足します。2024年よりもさらに20pt悪化するわけです。では、2030年より先の未来はどうなるかというと、自動運転の実用化によりドライバー不足を徐々に補える可能性が出てきます。もしかしたら2030年頃がドライバー不足のピークになるかもしれません。

そう考えると、2030年をターゲットにどうやってトラック輸送を継続するか、サステナブルにするかが重要なテーマになります。自動運転トラック、自動配送ロボット、ドローン、物流センターのロボティクス化など、様々な先進技術の普及が予想されます。こういった先進技術をどう活用していくかを考えることも大事です。

-自動運転トラックの実用化による影響
自動運転トラックの実用化は、今までの運送会社のビジネスモデルを破壊する可能性があります。輸送トンキロは「輸送量×距離」であるわけですが、この「距離」は今まで一般道を使っていたトラックが高速道路を利用するといった対策でも講じない限り、ドライバーの労働時間に比例します。さればこそ、運送会社のビジネスは極めで労働集約的であるといえます。「輸送量」を増やせないとすれば、ドライバーの労働時間が売上に直結するからです。自動運転になれば、この「距離=労働時間」の制約がなくなります。脱労働集約が現実のものとなるわけです。

運送会社の業務を「仕事をとる人」と「運ぶ人」に分けたとき、「仕事をとる人」は生き残ると思います。提案力で価値を発揮するにしても、トラックマッチングで最適化を実現するにしても、「仕事をとる業務」はなくなりません。しかし、自動運転が実用化すると、「運ぶ業務」は人がやる仕事ではなくなっていきます。

現状、自動運転トラックはかなりの高額です。そうであるがゆえに、相応の投資を実行できる大手運送会社以外は生き残れないという考え方もありますが、T2というベンチャーのように、自動運転トラックを売るのではなく、自動運転の運行サービスを提供しようと考えている企業も存在します。中小の運送会社であったとしても、幹線道路上ではT2のサービスを利用し、それ以外では自社の運行を継続することで勝ち残りを図ることも考えられます。地場中心の運送会社で、幹線は大手運送会社に委託しているのと同じようなスキームです。もちろん、遠い将来は一般道も自動運転になりますが、仕事をとる力を磨いたり、外部の自動運転サービスを利用したりすることで、勝ち残りの絵姿を描くことは十分に可能です。

2024年以降も勝ち残るために必要なこと

-見える化の先にあるデジタル化に実はそんなに高いハードルはない
今までお話ししてきた通り、2024年問題、その先にある2030年を見据えるに、これから大きな転換期を迎えます。5年先、10年先のことを考えることは難しいかもしれませんが、事業環境の変化を視野に入れつつ、足元での対策を検討・実行することが大切です。つまるところ、まずは「見える化」を進めるべきです。見える化できれば、国のガイドラインにも、テクノロジーの進歩にも、荷主の商慣習の変化にも対応できます。運送会社として選ばれ続けるために必須の要件といえるでしょう。

繰り返しお伝えしている通り、見える化するからといって、いきなり最初からデジタル化を進める必要はありません。紙でもいいですし、電話でもLINEでも構わないので、ちゃんと実態を把握することが重要です。とはいえ、紙を読んだり、電話を受けたりすることも手間なので、毎日の業務となるなら、デジタルツールやシステムを使った方が楽だよねというタイミングがやってくると思います。そのときに、紙でやりとりしていることを一番簡単に置き換えられるデジタルツールやシステムはどれかを調べて、適切なものを導入するのが良いと思います。

「パソコンが使えない」「新しいツールを覚えられない」「今まで通り紙でも問題ないのでは」といった「悪魔の囁き」もあると思いますが、プライベートではスマホを使っている人が多いのではないでしょうか。新しいアプリをダウンロードして使うこともできるはずです。それができるなら、法人向けのデジタルツールやシステムだって十分に使いこなせます。「何だか難しそう」「自分にはできない」という心理的なハードルに過ぎないのです。

ETCが普及したとき、「本当にゲートが開くかどうか心配だから使えない」「自分に使えるかどうか不安だ」などという理由で現金での高速代の支払を続けるドライバーがいたでしょうか。ETCを使うことのコストメリットが明らかだったこともありますが、ETCを導入できて他のデジタルツールを入れられない理由はないはずです。ETCが一般化したのと同様、「デジタルツールで労働時間を管理することが普通になるかもしれない」と想像してください。

展示会に行けば、様々なサービスが展示されています。出展者はより多くの企業に使ってもらうために、導入の仕方や使い方をわかりやすく説明してくれます。新しいサービスに触れてみて、自社に適したサービスはどれかを聞いてみてください。臆せず気軽にトライして欲しいです。

デジタルツールやシステムの導入というと、ソフトウエアの購入やサポートなどに多額の費用を要するとのイメージを持たれる方もいます。確かに、昔は数百万、数千万円規模の投資を必要とすることも珍しくありませんでしたが、最近はクラウドでの利用が一般的であり、初期費用を必要としないデジタルツールもあります。そういったパッケージシステムを使えば、簡単にデジタル化を実現できます。

もちろん、自社の業務プロセスに合わせてカスタマイズした方が使いやすいと思いますが、そのために多額の費用を投ずべきでしょうか。カスタマイズしたところで、5年後には新たな機能を追加する必要が生じるかもしれません。事業環境の変化が大きければ大きいほど、自社に合わせたカスタマイズはせず、世の中にあるパッケージシステムをうまく活用する方が合理的です。クラウドシステムを使ってみて、もし利便性に問題があるなら、3ヶ月後に他社のサービスを試して見ればいいと思います。

勝ち残るためには学び続け、変わり続けることが大事


日本の会社は、新しいサービスの利用が一定の割合を超えると、雪崩を打って使い始める傾向があります。新型コロナウイルスのワクチン接種もそうでした。最初は出遅れていたのに、気が付けば他国よりも高い摂取率に到達していました。そう考えると、TMSやWMSといった管理システムを導入している日本企業はまだ少数派ですが、10年後には「使っていることが当たり前」になっているかもしれません。今では「メールを使えること」「スマホを持っていること」が当然であるように、デジタルツールやシステムの利用が一般化していてもおかしくないはずです。「日本で一番早く導入すること」を目指す必要はありませんが、他社でも利用が拡大し、初期投資を必要としないデジタルツールやシステムが広がる中で、「うちには必要ない」と言っている会社は、デジタル感度が低く、事業環境の変化に乗り遅れているとの評価を受けるでしょう。

荷主の競争も激しくなっています。その厳しい競争を勝ち抜くためのパートナーとして選ばれるためには、運送会社自身も学び続け、変わり続けていく必要があります。事業環境の変化に先んじた手を打てなければ、時代に取り残されてしまいます。そうならないためにも、変化を恐れず、チャレンジしてください。

2024年問題とその先の2030年を見据えて、現状の見える化は当然のこと、先進技術の活用や荷主の変化に対応した新しいサービスモデルの構築を自律的に進めていただきたいと思います。この変化はピンチであると同時にチャンスでもあります。この千載一遇の好機をつかむことができれば、飛躍的な成長を実現することも夢ではないはずです。
プロフィール
ローランド・ベルガーパートナー
小野塚 征志 氏(おのづか まさし)

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、成長戦略、新規事業開発、DX戦略、M&A戦略、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、内閣府「SIPスマート物流サービス評価委員会」委員長などを歴任。近著に、『ロジスティクス4.0』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ』(日経BP)、『DXビジネスモデル』(インプレス)など。

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