【適切な交渉のためには重要な「見える化」】小野塚征志氏が解説する2024年以降も勝ち残る運送会社になるためには?Vol.3

Vol.2で説明した運送会社の取るべき対応策を実行するにあたって欠かすことのできない「見える化」について、
ローランド・ベルガーのパートナーでロジスティクス/サプライチェーン分野に深い知見を持つ小野塚征志氏に
解説いただきます。

荷主への適切な交渉のためには重要な「見える化」

2024年問題以降も勝ち残るためには、業務を「見える化」することが欠かせません。例えば、「2時間待たされても待機料をいただいていません」という状況になっている理由は、直接的には着荷主に原因がありますが、運送会社の管理に問題がある可能性もあります。

2時間待ったらどれだけ損をするのか」という計算ができている運送会社はどれくらいあるでしょうか。A社はすばらしいお客様で、待ち時間はほとんどありません。一方、B社にはいつも3時間以上待たされています。その場合にちゃんと追加料金を請求できていますか。もし追加料金を請求できていないとすれば、「待たせたもの勝ち」です。そのような状況であれば、みんなワガママを言うに決まっています。ワガママを言っても損をしないからです。

少し厳しく言うと、この「真面目な荷主が損をする状況」を生んでしまった原因には運送会社の管理不足もあると思います。それを「今回の2024年問題のタイミングで是正しましょう」「荷主も運送会社もそれではよくないから変えていきましょう」というムーブメントを起こすことで変革できればと期待しています。

もっとも、「2時間待ったらいくら請求しましょう」という議論をするためには、「2時間待った」という事実を把握する必要があります。まずは、「どれくらい待たされていたのか」「どのような作業をしていたのか」を把握すること、きちんと「見える化」することが非常に重要です。

下請け会社のトラック管理ができないと着荷主の対応と同じこと

自社のトラックだけでなく下請けの運送会社に委託して荷物を運ぶことも多いでしょう。自社のトラックはさておき、「下請けのトラックは管理できていない」「待機時間が発生しているかどうかもわからない」というなら、その元請けの運送会社がやってることは着荷主と一緒です。元請けの運送会社がそういう非合理を生んでいる場合もあります。

「うちは元請けではなく一次受けです」と言っても、荷主からすれば他の運送会社を使っていることに変わりはありません。運送会社同士でもこの状況を見過ごしてきたわけです。「見える化」の対象を自社のトラックのみに限定するのではなく、下請けのトラックも含めて、まずはどれぐらい待機時間があり、どのような荷役作業に従事したのか、それに関していくら請求できているのか、本当のコストパフォーマンスを明らかにすることが大事です。

待たせていない荷主もいれば、待たせている荷主もいます。実際に発生しているコストを把握し、適正な料金を算定できるようになれば、「2時間待つことが割に合うのか合わないのか」「待機時間の解消を交渉すべきなのか」「どの程度の対価を得るべきなのか」を定量的に判断できます。計算した結果、コストパフォーマンスが高ければ、荷主と交渉する必要はないはずです。これまでは勘や感覚に頼っていたかもしれませなが、今後は法令を遵守するためにも「見える化」した結果をもとに適正な対応を下すことが重要になると考えるべきです。

見える化=デジタル化・システム導入する必要はない



ここでお伝えしたいことは、「見える化=デジタル化・システム化ではない」ということです。「デジタルツールを入れるとなると導入費用や月額料金がかかる」「使い方がわからない」「パソコンがない」などの理由で「見える化」を諦める運送会社もありますが、そんな必要はありません。最初はドライバーが着いた時間と出た時間をメモすればいいのです。紙でもいいですし、紙に書くのが面倒ならメールやLINEでもいいと思います。

その結果としてムダな待機時間などを発見し、改善できたとして、「将来同じような問題が発生することを防ぎたい」「毎日・毎週状況を把握することで変化に速やかに気づきたい」「それを実現するにあたり紙やメールでは手間だ」となったときにはじめてツールを入れるかどうかを考えれば良いのです。まずは紙でもなんでもいいので「見える化」できれば問題ありません。

有識者会議では見える化の一手としてデジタコの義務化検討も

「デジタルツールを導入せずとも見える化できますよ」と言っても、実際のところ、「面倒くさい」「ドライバーの協力を得られない」「やらなければならない理由がわからない」となります。それゆえ、国の有識者会議である「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、デジタコ(デジタルタコグラフ)の義務化が議論されました。トラックの位置情報を把握できるGPS搭載のデジタコを義務付けてしまえば、労働時間の改ざんを防止できるだけではなく、待機時間を把握することも可能です。実際、今年8月に発表された「最終取りまとめ」では、「デジタコの義務化」が言及されています。

GPS搭載のデジタコを義務化すれば、どこからどこまで何時間かけて移動したのか、どこでどれくらい待機していたのかがわかります。どの着荷主の前で何時間待たされていたのかがわかれば、交渉すべき相手もはっきりします。時間外労働の上限規制を超えて働いていないかどうかも明確になります。「必然的に見える化されるツール」の装着を義務付ける方が効果的なのではということです。

ただ、デジタコの義務化はあくまで検討段階です。2024年問題への対応に向けては、各事業者なりに「見える化」を進めていくことが求められます。

プロフィール
ローランド・ベルガー パートナー
小野塚 征志 氏(おのづか まさし)

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。サプライチェーン/ロジスティクス分野を中心に、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開している。内閣府「SIPスマート物流サービス評価委員会」委員長、経済産業省「フィジカルインターネット実現会議」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員などを歴任。近著に、『ロジスティクス4.0』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ』(日経BP)、『DXビジネスモデル』(インプレス)など。

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