【2024年問題と対応必要事項】小野塚征志氏が解説する2024年以降も勝ち残る運送会社になるためには?Vol.1

2024年4月まであと半年、2023年4月からは割増賃金の割合が上がり、2024年4月より「働き方改革関連法」で
定められた時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用されるなど、目まぐるしく環境が変わっていきます。
この2024年問題を乗り越えるためには、労務対策や業務効率化、荷主企業への条件交渉などの適切な対応が
求められる状況です。ローランド・ベルガーのパートナーでロジスティクス/サプライチェーン分野に
深い知見を持つ小野塚征志氏に「運送会社が2024年問題を乗り越えるためにすべきこと、考えるべきこととは?」を
お聞きしました。

運送業界における2024年問題と対応必要事項とは?

-2024年問題の影響
働き方改革関連法が適用されると時間外労働に制限がかかるため、トラックドライバーの人数が今と変わらなかったとしても総労働時間は短くなり、結果としてドライバーの供給不足が生じます。
運送会社から見ると、元々労働時間が長かった長距離トラックのドライバーは運転できる時間が短くなります。ドライバー1人が1日でモノを運べる、いわゆる輸送トンキロが減るとすれば、1人あたりの売上も減ります。つまり、その人から見れば賃金減のリスクがあるといえますし、会社全体として見ると売上が減るリスクがあるという認識です。
一方、荷主から見れば、運賃が上昇し、モノを運びたくても運べない状況が生じる可能性があります。NX総合研究所の試算では、2024年問題が発生すると15%弱の輸送力が不足すると出ています。要するに今まで運んでいた量を100としたら85ぐらいしか運べなくなるということです。

-国の方針と持続可能な物流の実現に向けた検討会
2024年問題をはじめとする物流の諸問題を解決するため、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」が設置され、去年の9月から今年の6月まで開催されました。有識者や関係団体、関係省庁が物流を持続可能なものとするための方策を検討し、パブリックコメントを経て、8月に「最終取りまとめ」が発表されています。
今年の6月2日には、関係閣僚会議が「物流革新に向けた政策パッケージ」を発表しました。この中身には、先ほど申し上げた検討会での議論の内容が少なからず反映されています。そして、この政策パッケージの発表直後、経済産業省、農林水産省、国土交通省の三省は、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者が早急に取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を公表しました。

物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドラインとその効力とは?



-それぞれの事業者ごとにやるべき事がわかりやすく記載されている
「発荷主はこういうことをやりましょう」「着荷主はこういうことをやりましょう」「物流事業者はこういうことをやりましょう」という形で主体によって書き分けられています。「発着関係なく、荷主だったらこういうことやってください」という記載もありますが、運送会社なら荷主部分のパートを見る必要はなく、物流事業者のパートを見て、やるべきことをやればいい、というわかりやすい構成になっています。

-それぞれの事業者ごとに2段階に分かれている
荷主、物流事業者ともに「実施が必要な事項」と「実施することが推奨される事項」の2段階に分かれて記載されています。「実施が必要な事項」に書いてあることをちゃんと取り組めているかを確認してください。対応できていないなら取り組んでください。その上で「実施することが推奨される事項」も見ていただいて、そちらも是非可能な限り取り組んでくださいという内容になります。

-物流事業者の取組事項

引用元:物流の適正化・生産性向上に向けた 荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン

-規制的措置の法制化を見据えるべき
行政としては、このガイドラインにおいてやるべきことを的確に把握し、実行していくことを求めていますが、このガイドライン自体に法的拘束力はありません。とはいえ、関係閣僚会議が出した政策パッケージでは、来年度の通常国会での法制化を含めた規制的措置の具体化が明示されています。法律ができた際には、物流革新に向けた取り組みはよりパブリックなものとなるでしょう。このガイドラインに準拠して取り組んでおかないと、「法律で示されたことにきちんと対応できていない」「法令遵守していない」ということになるかもしれません。将来の法制化を見据えて今から取り組んでいくことが望まれます。
他方、ガイドラインをうまく活用して、荷主に適切な交渉ができるという点では良い影響もあります。ガイドラインに準拠した上で、しっかりと顧客ごとの実態を把握し、「見える化」することは非常に重要になります。きちんと「見える化」した上で改善が図られれば、本来は荷主と運送事業者のどちらも幸せになれるはずです。是非そこを目指していただきたいと思います。

プロフィール
ローランド・ベルガー パートナー
小野塚 征志 氏(おのづか まさし)

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。サプライチェーン/ロジスティクス分野を中心に、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開している。内閣府「SIPスマート物流サービス評価委員会」委員長、経済産業省「フィジカルインターネット実現会議」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員などを歴任。近著に、『ロジスティクス4.0』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ』(日経BP)、『DXビジネスモデル』(インプレス)など。

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